鎮魂歌〜ジャッキーへ〜

バイバイ 相棒

床に就いたのが午前五時半。そして母が俺を起こしたのは6時半。そして俺に言った。

「ジャッキーが死んだ」

一瞬、信じられなかった。
昨日は、案の定よたついてはいたが、まだまだ元気そうに見えたのだ。そして昨晩深夜3時過ぎ、ワン!!という鳴き声を聞いたのである。俺はそのとき、少し嫌な予感はしたものの、鳴く力が残っているのならまだ大丈夫だと自分に言い聞かせていた。

しかし、それは、その鳴き声は、あいつの最後の気力を振り絞った声だったのだ。きっと俺たちに何か伝えようとしたのだろう。「今までありがとう。お先にいきます」てな感じで。なんともニクイことをしてくれるわ。

実際、ジャッキーは眠っているようだった。だから、俺はまだ生きてるんじゃないのかと思い、咄嗟に「ジャッキー!ジャッキー!起きろ!」と叫んでいた。しかし、反応はやはりない。本当に眠るように死んでいたのだ。かわいらしい顔でまた。

数ヶ月前から、こいつが死んだら、うちの竹やぶに埋葬することは決まっていた。なので、俺たちの反応は早く、あっという間にこいつを軽トラックに積み込んだ。時刻は午前7時。父は仕事なので、俺が軽トラを運転して、母と近くの竹やぶに行くことに。そして、到着して、すぐにスコップで穴を掘り、その中にジャッキーを入れた。その上から愛用の座布団と大好きだったカツオブシをいれ、最後に散歩に使っていた縄も一緒に入れて、二人して土をかぶせた。最後に、両脇に線香を供え、手を合わせた。「今までありがとう。俺がそっち行くまで、もうちょっと待っててくれよ」と心の中でつぶやいた。

こいつは俺にとっての兄弟であり、愛人であり、親友だった。15年をともに過ごした仲なのだ。もうこいつの鳴き声も、飯を食う姿も、走りまわる光景も見られないと思うと、本当に悲しい。今まで、祖父母の死に目には何度も立会い、葬式も幾度となく経験してきたが、その中でも、一番悲しい(爺ちゃん婆ちゃんには申し訳ないが)。いて当たり前のものが突然いなくなるこの虚無感。もうどうすることもできない無力感。そして脱力感。時間が経つにつれて、俺はこいつの鳴き声や顔を忘れていくのだろう。しかし今はただ、思い出にふけり、涙を流すことにしたいと思う。

愛すべきものを失う哀しみを、22年間生きてきて、初めて知ったわ。

ばいばい相棒 また会う日まで